<黒猫の後悔:1>
なぜ猫は凶暴になるんだろうねー?
黒猫は「もう歩けない」と思った。
四つの足、全部がしびれている。
無理をして踏み出すと痛くて声が出る。
「フゥ~」 お腹も空いた。
黒猫には名前があったが、
今はもう誰もその名を呼ばなくなった。
そう、もうずっと一人きりだ。
10日前に家を飛び出した。
ちょっとウルさく鳴いて、ごはんを足蹴にした。
ふかふかのクッションに粗相をして、
色んな物を倒したり壊したり破いたりした。
同居人がオロオロしているのが面白くて、
それをずっと繰り返した。
やさしく撫でてくれていた同居人の手に噛みついて、
そのまま家を飛び出してきた。
ちょっとやりすぎたな……。
あのときのご飯、ちゃんと食べときゃ良かった。
黒猫は思った。
ひどいことをした。
噛みついた手からにじんだ血の味が、まだ喉の奥に残っている。
つづく・・・?